技術士二次試験でAIに答えを作らせるより論理を査読させた方が役に立った話

AI活用

技術士二次試験の建設部門、鋼構造及びコンクリートを受験したあとで、意外に大きな収穫だったのは、試験そのものの出来不出来ではなく、AIの使い方に対する理解でした。

もちろん、合否を予想するつもりはありません。この記事は、正解例の再現でも、採点結果を予想するものでもありません。あくまで、技術士二次試験2026の受験後レビューとして、AIをどう使うと実務経験者にとって価値が出るのかを整理するものです。

今回強く感じたのは、AIに「答え」を作らせるより、自分の論理を査読させる方が役に立つ場面がある、ということでした。

試験対策でAIを使うと聞くと、模範解答を作らせる、答案構成を作らせる、暗記カードを作る、キーワードを整理する、という方向を想像しやすいです。たしかに、それらも使い方としてはあります。

ただ、実務経験がある人間にとっては、AIに答案を丸ごと作らせるより、自分が引っかかった設問、自分が選んだ課題設定、自分の論理のつながりをAIに検査させる方が、有益な場合があると感じました。

一般的なAI試験対策は答案作成に寄りやすい

技術士二次試験のような論文試験でAIを使う場合、一般的には次のような使い方が考えられます。

  • 設問に対する答案例を作る
  • 整った答案例の文章を作る
  • キーワードを整理する
  • 暗記用の要点をまとめる
  • 汎用的な答案構成を作る
  • 課題、対策、リスク、波及効果を並べる

これはこれで便利です。特に、論文構成に慣れていない段階では、答案の型を確認する意味があります。

しかし、実務経験者がそのまま使うと、どこかで違和感が出ることがあります。

AIが作る答案は、きれいに見えます。用語も入っています。課題、対策、リスクも並びます。ただし、きれいすぎる答案は、逆に「自分の実務感覚」とずれることがあります。

実務では、課題が一つに整理されているとは限りません。品質を上げる対策が、生産性を落とすこともあります。標準化したいが、地方独自様式は残ります。AIを使いたいが、機密情報や責任境界の問題があります。

つまり、実務者が本当に悩むのは、答えの部品が足りないことではなく、部品同士の関係がねじれていることです。

自分には「模範解答を作らせる」方向があまり合わなかった

今回の受験を振り返ると、AIに模範解答を作らせる使い方は、自分にはあまり合いませんでした。

理由は単純で、AIが出す文章が正しそうに見えても、それをそのまま自分の答案として使えるわけではないからです。

技術士二次試験では、知識だけではなく、課題設定、実務上の制約、対策の優先順位、リスク、波及効果を自分の言葉で説明する必要があります。AIが整った文章を作ってくれても、自分がその論理を腹落ちしていなければ、試験本番では使いにくいです。

また、実務経験者ほど、AIの一般論に引っかかることがあります。

「DXを推進する」「AIを活用する」「標準化を進める」「人材育成を行う」。これらは間違いではありません。しかし、現場ではその前に、様式差分、二重入力、Excel帳票、写真整理、提出前修正、照合作業、整合確認のような泥臭い問題があります。

そこを飛ばして、きれいなDX論に行くと、自分の実務感覚から離れてしまいます。

試験後に設問そのものをAIと議論したら見え方が変わった

受験後にあらためて設問をAIと議論してみると、面白かったのは「答案を作らせる」ことではありませんでした。

むしろ、次のような問いを投げたときに価値がありました。

  • この課題設定は浅くないか
  • 品質確保と生産性向上の関係はつながっているか
  • 課題と対策が対応しているか
  • 技術名だけを並べた答案になっていないか
  • 採点者から見て論理の穴になりそうな部分はどこか
  • トレードオフを無視していないか
  • 実務経験者の答案として不自然なところはないか

こうした壁打ちをすると、AIはかなり使えます。

AIは、こちらの文章や考え方に対して、論理の飛び、前提の不足、対策との不対応を指摘してくれます。もちろん、AIの指摘が常に正しいわけではありません。しかし、自分の中で曖昧だった部分を言語化するきっかけになります。

試験対策というより、論理の棚卸しに近い使い方です。

AIを教師ではなく査読者として使う

この経験から、自分の中ではAIの位置づけが少し変わりました。

AIは教師というより、査読者、壁打ち相手、反証者として使う方が合っている場面があります。

教師として使うと、AIが正解を教えてくれる前提になりがちです。しかし、建設実務や技術士論文では、そもそも唯一の正解に落ちにくい論点があります。

品質と生産性の両立。地方独自様式と標準化。AI活用と責任境界。帳票自動化と人間確認。これらは、単純に「これが正解」と言い切るより、どの前提ならどの対策が妥当かを整理する方が重要です。

査読者としてAIを使う場合、こちらがまず仮説を出します。

たとえば、「品質を維持するための業務運用が非効率になっていることを中心課題にしたい」と考えます。そのうえでAIに、課題設定として成立するか、品質と生産性の関係がつながるか、対策が課題に対応しているかを確認させます。

この使い方なら、AIが答えを作るのではなく、自分の論理を磨く補助になります。

実務経験者ほどAIの反証機能が効く

実務経験者は、現場の具体的な違和感を持っています。

たとえば、帳票の話であれば、「そこは自動化できるが、最終確認は人間が見る必要がある」「その情報はExcelにはあるが、Word側では表現が変わる」「写真とコメントはファイル名だけでは管理できない」といった感覚です。

この感覚は、AIが最初から持っているものではありません。だから、AIにいきなり答えを書かせると、一般論に寄りやすくなります。

一方で、実務者が先に仮説を出し、AIに検査させると、使い方が変わります。

  • 自分の経験則が説明になっているか
  • 思い込みで飛ばしている前提はないか
  • 反対側から見ると弱い部分はないか
  • 課題と対策の対応が崩れていないか
  • 説明責任として不足している箇所はないか

AIは、こちらの実務感覚を置き換えるものではありません。むしろ、実務感覚を文章化し、他人に説明できる形へ整えるための相手として使うと、価値が出ます。

技術士試験だけでなく実務整理にも使える

この使い方は、資格試験だけの話ではありません。

建設コンサル実務でも、同じような場面があります。

  • 新しいツールを作る前に、何を解決するのか整理する
  • Excel帳票を自動化するとき、責任境界を確認する
  • 発注者様式と社内様式の差分をどう扱うか考える
  • 成果品整理の流れを見直す
  • AIに渡してよい情報と渡してはいけない情報を分ける
  • 帳票の整合確認で、何を自動検出し、何を人間確認に残すか決める

これらは、単純な答えを作る作業ではありません。

むしろ、課題設定、前提条件、制約、責任境界、例外処理を整理する作業です。ここでAIに「正解」を求めると危ういですが、「この考え方に穴はないか」と問うと役に立ちます。

維持DXではAIを答えの自動生成だけに使わない

維持DXの文脈でも、AIは単なる文章生成やコード生成だけの道具ではありません。

もちろん、記事生成、README作成、VBAコードのたたき台、正規表現候補、設計メモの整理には使えます。しかし、それ以上に重要なのは、課題設定と責任境界の確認です。

建設実務の帳票DXでは、次のような判断が必要になります。

  • どの項目を自動転記してよいか
  • どの項目は人間確認に残すか
  • どの帳票を正本として扱うか
  • どの差異をエラーにし、どの差異を警告にするか
  • 整合確認の結果をどう利用者へ見せるか
  • 自動化が品質保証のように誤解されないか

これらをAIに丸投げするのは危険です。しかし、AIに複数の観点からレビューさせることはできます。

「この仕様だと利用者が完全自動だと誤解しないか」「この文言は保証表現に見えないか」「このエラー処理では実務上の確認が不足しないか」。こうした問いには、AIの査読機能が効きます。

AI活用は自分の論理を外に出す訓練でもある

AIに論理を査読させるには、自分の考えを一度外に出す必要があります。

頭の中で何となく分かっているだけでは、AIは検査できません。課題、前提、対策、懸念、判断保留点を文章にする必要があります。

これは面倒ですが、実務ではかなり重要です。

なぜなら、建設DXや帳票自動化の失敗は、コードのミスだけで起きるわけではないからです。むしろ、何を自動化するのか、何を保証しないのか、どこを人間が確認するのかが曖昧なまま進むことで起きます。

AIに査読させるために文章化する。その過程で、自分の設計も整理されます。

そう考えると、AI活用の価値は「早く答えを出すこと」だけではありません。自分の論理を他者に見せられる形へ整えることにもあります。

まとめ

技術士二次試験の受験後レビューとして、今回強く感じたのは、AIに答えを作らせるより、論理を査読させる方が役に立つ場面があるということでした。

模範解答、暗記、答案構成の作成にもAIは使えます。ただ、実務経験者にとっては、それだけでは物足りないことがあります。実務の違和感、トレードオフ、責任境界、課題と対策の対応関係を確認する相手として使う方が、むしろ価値が出る場合があります。

AIを教師としてではなく、査読者、壁打ち相手、反証者として使う。これは資格試験だけでなく、建設DX、帳票整理、Excel自動化、成果品整理、整合確認の設計にもつながります。

維持DXでは、AIを万能な答えの生成装置としてではなく、実務者の課題設定と判断を補助する相手として使っていきたいと考えています。

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